昔 保育士をしていました。保育士になるために真面目に?勉学中 授業で物語を作りましょう!というのがあった。そのとき作った物語を先生が ”みんなの前で発表しなさい” とのことで読んだ物語。どこかにあるんじゃない?みたいな内容ですが ここで、思い出しながら。

イチョウと牛鬼
僕がまだ少年のときの 不思議な思い出です。ある放課後 僕は一人で近所の神社に遊びに行った。季節は秋。境内にはイチョウの葉が敷き詰められて 金色の世界。この地域では11月の秋祭りには 牛鬼が練り歩く。
僕は イチョウの葉っぱを組み合わせて 牛鬼を作っていた。顔はもちろんイチョウの葉っぱ。体はいろいろ工夫しながら四苦八苦。ふと左側を振り向くと 見たことのない 小さな女の子がちょこんと座って 手作りの牛鬼を興味深く見つめている。ドキッとしたけど 女の子は 「なに作ってるの?」 「イチョウの葉っぱで 牛鬼作ってるよ」 「ふ~ん・・」僕は仕上げを一生懸命していた。
「よし!できた!」少年なりに上出来。僕はとても満足。女の子も にっこり笑って牛鬼を見つめていた。妹のいない僕には その笑顔がとっても可愛くて 「これ あげるよ。」と手渡す。「ありがとう。欲しかったの。」女の子はもうひとつ とびっきりの笑顔で言った。僕は照れくさくなって 片付けをする。
すると 急に ビューっと風が吹いた。僕は目を閉じて風が吹くのを待った。目をあけて女の子の方を向くと 誰もいない。周りをきょろきょろ見渡しても 金色の中に 僕一人。イチョウの枝が揺れていた。そして 女の子いたところには 秋の紅葉の葉がひとつ。 僕はその紅葉の葉を大切に持って、「もう 帰ろう。」
秋祭りのあとの 僕の不思議な思い出。
おしまい